屋根の漆喰とは?放置すると起こる家へのダメージとは
2025/12/16
屋根の点検を依頼したとき、「漆喰が剥がれていますね」と指摘された経験はありませんか。
普段の生活のなかで漆喰(しっくい)に触れる機会はほとんどなく、劣化していても気づきにくい部分です。
しかし、この漆喰は瓦屋根を雨水から守るための、非常に重要な防水部材なのです。
もし劣化を放置すると、雨漏りや瓦のズレ、下地の腐食といった深刻なトラブルにつながり、住宅の寿命を縮めてしまうこともあります。
この記事では、
- 漆喰とは何か
- 劣化するとどんな症状が起こるのか
- 放置するとどんなダメージにつながるのか
- 修理方法と時期の目安
を、わかりやすく丁寧に解説していきます。
漆喰の剥がれは、早めに気づけば小さな補修で済むケースも少なくありません。
ぜひ屋根メンテナンスの参考にしてみてください。
屋根の漆喰とは?まずは役割を理解しよう
漆喰はどの部分に使われているのか
漆喰は、瓦屋根の「棟(むね)」と呼ばれる最も高い部分や、瓦と瓦の接合部を補強するために使われています。
白い粘土のような見た目で、瓦を固定する“葺き土(ふきつち)”を外部の雨風から守る役割も担っています。
瓦そのものは耐久性が高い建材ですが、漆喰は外気の影響を受けやすいデリケートな素材です。
漆喰の役割は防水と固定の2つ
漆喰の役割は主に2つあります。
雨水の侵入を防ぐ防水効果
葺き土の上に漆喰を塗り込むことで、雨水が入り込まないように蓋をしている状態になります。
この「蓋」が弱まると、雨水が棟内部に侵入し、雨漏りへとつながってしまうのです。
瓦を安定させる固定効果
強風や地震があっても瓦がズレないよう、漆喰が補強材として働いています。
見た目以上に重要で、屋根の耐久性を左右する部分でもあります。
漆喰は、瓦屋根の耐風性・防水性・耐久性を支える重要な建材なのです。
漆喰が劣化する理由とは?
紫外線・雨風による自然劣化
漆喰は外気にさらされているため、常に紫外線と雨風、寒暖差の影響を受け続けています。
奈良市は夏の日差しが強く、冬の冷え込みも厳しいことから、劣化が早く進む環境です。
乾燥と吸水を繰り返すことで徐々に硬化し、やがてひび割れや剥離が起こります。
施工不良による早期劣化
漆喰の塗り厚が薄かったり、密着処理が不十分だったりすると、数年で剥がれることもあります。
特に築年数が古い住宅では、昔の施工基準で仕上げられているため、現在の基準に比べて劣化が早いケースもめずらしくありません。
地震・強風による棟瓦の動き
関西は地震や突風が多い地域でもあります。
瓦屋根は重力によって保持されているため、揺れや強風で棟瓦が少しズレるだけでも、漆喰に負荷がかかり、剥がれが進行します。
放置すると起こる家への深刻なダメージ
漆喰の劣化は単なる見た目の問題ではありません。
少し剥がれているだけと軽く考えると、後悔することになりかねないのです。
雨漏りの発生
漆喰が剥がれると、内部の葺き土に雨水が直接触れます。
葺き土が湿ると瓦が浮き、そこから雨水が侵入してしまいます。
瓦屋根は構造上、棟部分の防水が弱点となりやすいため、漆喰の劣化はそのまま雨漏りに直結します。
瓦のズレ・落下の危険性
葺き土が流れ出すと瓦の支えが弱くなり、強風や地震で瓦がズレやすくなります。
落下すれば危険なだけでなく、そこから新たな雨水ルートが生まれてしまいます。
屋根下地の腐食
雨水が内部に入り続けると、防水紙(ルーフィング)が破れ、やがて野地板(屋根の下地がしら)が腐っていきます。
ここまで進行すると部分補修では対応できず、葺き替え工事が必要になります。
費用も大きく跳ね上がるため、早期の点検・補修が何より重要なのです。
シロアリ・カビの発生
湿った木材はシロアリが好む環境です。
奈良市は湿度が高いため、雨漏り箇所からカビが繁殖しやすく、アレルギー症状を引き起こすケースもあります。
漆喰劣化の代表的な症状(チェックポイント)
漆喰の劣化は、外からでもある程度確認できます。
以下の症状があれば、劣化が進行しているサインです。
外観でわかる症状
- ひび割れがある
- ポロポロと剥がれ落ちている
- 黒ずみや変色がある
- 棟瓦のラインが波打って見える
棟瓦が波打って見える場合、内部の葺き土が流れ出している可能性が高く、注意が必要です。
室内で気づく症状
- 天井にシミができている
- クロスが浮いたり剥がれたりしている
- 雨の日だけ天井にポタポタ音がする
屋根裏に雨染みがないのに天井だけ濡れる場合、棟部分からの雨水が室内へ回り込んでいる可能性があります。
漆喰補修で済むケース・済まないケース
補修で対応できるケース
- 軽度のひび割れ
- 表面の一部剥離
- 棟瓦にズレがない状態での表面劣化
この程度なら、漆喰を塗り直すだけで問題ありません。
費用も比較的安く抑えられます。
補修では不十分なケース
- 葺き土が露出している
- 棟瓦がグラついている
- すでに雨漏りが発生している
- 施工から20年以上経過している
漆喰だけを直しても根本的な改善にはならず、すぐに再発する可能性があります。
葺き直し・カバー工法が必要なケース
下地やルーフィングが傷んでいる場合は、棟を積み直す工事や、屋根全体の葺き替えが必要になることもあります。
白漆喰と南蛮漆喰の違い
漆喰補修では 白漆喰 と 南蛮漆喰 のどちらを使うのかで、耐久性や見た目が変わります。
それぞれの特徴をより深く理解しておくことで、工事内容の判断がしやすくなります。
白漆喰:伝統的な素材で美しい仕上がり
白漆喰は、古くから瓦屋根で使われてきた伝統的な材料です。
消石灰を主成分とし、自然素材ならではの白さや柔らかい質感が特徴です。
見た目がとても美しく、昔ながらの和瓦との相性も抜群です。
ただし、自然素材ゆえに 雨風や紫外線の影響を受けやすく、耐久性は10〜15年前後 とされています。
築年数の浅い段階での補修には適していますが、「長く保たせたい」という場合は後述の南蛮漆喰の方が向いています。
南蛮漆喰:防水性・耐久性に優れた現代の主流
南蛮漆喰は、白漆喰に防水成分や繊維を混ぜた高耐久タイプの漆喰です。
柔軟性があり、吸水しにくく、ひび割れしにくいという特徴があります。
耐久性は 20年前後 といわれ、白漆喰の倍近い寿命を持つこともめずらしくありません。
そのため現在では、屋根補修の多くが南蛮漆喰を用いた仕様になっています。
「できるだけ長持ちするメンテナンスをしたい」
「次の補修サイクルを延ばしたい」
こうした方には、南蛮漆喰が圧倒的におすすめなのです。
部分補修の流れを具体的に解説
漆喰が軽度に劣化している場合は、部分補修で十分対応できることが多いです。
作業工程を知っておくと、見積もり内容の理解もしやすくなります。
①古い漆喰の撤去(ケレン作業)
まず、劣化してぽろぽろ落ちている漆喰を専用の工具で丁寧に削り取ります。
この作業が不十分だと、新しい漆喰が密着せずに早く剥がれてしまうため、非常に重要な工程です。
②下地の確認と調整
漆喰を削ると、内部の葺き土(ふきつち)が露出します。
ここに水が回っていないか、土が流れ出していないかを細かくチェックします。
必要に応じて葺き土を補強し、漆喰がしっかり定着する状態に整えていきます。
③新しい漆喰を施工
仕上げには白漆喰または南蛮漆喰を塗り込みます。
漆喰は乾燥スピードや気温によって扱い方が変わるため、熟練職人でなければきれいに仕上げることが難しい繊細な作業です。
④仕上がり確認・清掃
塗り込んだ漆喰が綺麗に密着しているか、棟瓦のラインが整っているかを確認し、施工を終えます。
部分補修であれば 1〜2日程度 で完了することが一般的です。
棟の積み直し工事とは?重度劣化に対応する本格補修
部分補修では対応しきれない場合に必要になるのが 棟の積み直し工事 です。
屋根の“頭(てっぺん)”にあたる棟部分は、屋根で最も水が集まりやすく、地震や風の影響を受けやすい場所です。
劣化が重度になると、棟内部の葺き土が崩れたり、瓦がズレたりしてしまい、部分補修では改善できません。
積み直し工事の流れ
①棟瓦をすべて取り外す
棟部分の瓦を一枚ずつ丁寧に外していきます。
このとき、瓦の割れや欠けがないか、再利用可能かの判断も行います。
②葺き土の撤去と新設
古くなった葺き土を取り除き、新しい土や南蛮漆喰を詰め直します。
ここをしっかり行うことで、防水性と耐久性が格段に向上します。
③棟瓦を新しく積み直す
土台を整えたあと、瓦を真っすぐ積み直します。
ズレや歪みが出ないよう、高さ・角度・水平を細かく調整しながら施工する技術力が求められます。
④全体の固定・点検
最後に漆喰を仕上げとして塗り込み、棟全体を安定させます。
積み直した後は、強風・地震にも強い“新しい棟”として長期間の耐久性が期待できます。
積み直しが必要になる主なケース
- すでに雨漏りが発生している
- 葺き土が流れ出て棟瓦がグラついている
- 漆喰ではなく「棟全体の構造」が傷んでいる
- 築20〜30年以上でメンテナンス歴がない
部分補修より大掛かりですが、根本から直すことで 長期的な安心が得られる方法 です。
費用の目安(一般的な相場感)
| 工事内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 部分的な漆喰補修 | 3〜10万円前後(範囲・量による) |
| 棟の漆喰総塗り直し(棟全体) | 10〜25万円前後 |
| 棟の積み直し工事(全撤去・再構築) | 20〜50万円前後 |
| 屋根全体の葺き替え(雨漏りが重度の場合) | 70〜150万円前後 |
あくまで目安ですが、軽度のうちに補修すればコストは最小限で済む ということがわかります。
まとめ
漆喰は瓦屋根を支える重要な防水・補強材ですが、紫外線や雨風、経年劣化によって徐々に傷んでいきます。
軽度のひび割れであっても、放置してしまうと雨漏りや瓦のズレ、下地腐食へとつながり、住宅に深刻なダメージを与えてしまうのです。
奈良市は気候の影響を受けやすい地域であるため、10〜15年を目安に一度専門業者による点検を受けると安心でしょう。
漆喰の剥がれや雨漏りが気になる方は、ぜひ雨もり屋 奈良店にご相談ください。
屋根全体の状態を丁寧に確認し、必要な工事だけをご提案いたします。
Q&A
Q1. 漆喰補修はどのくらいの周期で必要ですか?
一般的には10〜20年が目安ですが、屋根の形状や立地環境によって劣化速度は異なります。
Q2. 漆喰が少し剥がれているだけなら様子見でも大丈夫?
表面の剥がれだけに見えても内部劣化が進んでいることが多く、放置はおすすめできません。
Q3. 築30年以上の屋根は補修より葺き替えのほうが良い?
棟瓦のズレや下地腐食がある場合は、漆喰補修では追いつかず葺き替えのほうが長持ちするケースが多いです。




